それなり以下くらいには

働き(!)始めてからから、やっぱり忙しいです。
まったく時間がないってわけじゃないけど、時間を作ったときの影響を避けたいくらいにはいろいろとありました。

女王陛下のアルバイト探偵  大沢在昌
女王陛下のアルバイト探偵 (講談社文庫)

旅をする裸の眼 多和田葉子

旅をする裸の眼 (講談社文庫)

旅をする裸の眼 (講談社文庫)

べっぴんぢごく 岩井志麻子

べっぴんぢごく (新潮文庫)

べっぴんぢごく (新潮文庫)

「女王陛下のアルバイト探偵」
女王陛下と聞くとどうにも英国を思い浮かべてしまって、少しだけ違和感。
そういうわけでは展開の予想は相当違っていました。名前から思い浮かべたのは、親のつながりで英国諜報員の手伝いをすることになって、英国やヨーロッパを縦横無尽みたいな感じだったので。

やっぱり時代が少し経つだけあって、主人公の”主人公らしさ”がやっぱり微妙に違ってきているようには思いました。
この主人公は一昔前の「男の理想像」のなりかけ、といったキャラクターなのです。
この主人公はかるーく遊びに出かけて、オンナノコにちょっかいをかけ、車(もちろん無免許)で駆け回ったりしちゃう。
真の「男の理想像」は父親なわけですが、そのあたりの関係性だとか、キャラクターの完成度は高くて、やっぱりこれはこれで面白い。
そんなに嫌いなわけでもないのです。理想はやっぱり理想でしかない、というだけで。


この主人公に、ヒロインは割と簡単に惚れますが、もしこの主人公を現代小説に持ってきたらヒロインは簡単につながらないかもです。今のヒロインって、こういう主人公に対して冷たいという属性を付けられることが多いような気がする。それはやっぱり都合がいいことなのかもしれなくて、現実と乖離してしまうのかも。



「旅をする裸の眼」
いや、凄い。時代のキラキラした部分とかに目を向けたくなるし、その方が物語を作りやすかったりするのかもしれない。ただそうじゃない物語を書けるっていうのはすごいと思うし、うらやましい。
言葉について、真摯であるこの作家だから、という部分はあるかもしれない。
なにせ主人公が社会主義国出身であるのだもの。この設定を使えるというだけで、もう。もしかしてベルリンの壁崩壊するのだろうか、関わるのだろうか、とか予測したけど全く関わらないしね!


「べっぴんぢごく」は床さんにいただいた本だったけど、床さんは読んだのかな、これ。
こういうクロニクル系とか、家のつながりとか。それなりに楽しく読めました。
ただ最後、解説に「夜のみだらな鳥」の名前があって、なるほどここで比べられるのか、と考えたり。

こういうクロニクル的なものは、作者にとって、物語にとってわかりやすく印象的な部分を取るようになってしまう、とおもうのだけど、そうなると都合がいいと思われがちなのではないでしょうか。

人の思いは一瞬で形作られるのでも、永遠の縛られるものでもないのでは、とは思います。人を変える奇跡のような偶然は本当に素晴らしいと思うのですが、わざとらしい奇跡っていうのは興をさめるしね。


特に最後のあたりは勢いで読み終えたような感じで、もう少しどうにかしてほしかったかなー。関係を繋げるだけじゃだめだと思う。


あと感じたのはどうにもキャラクターが、恋だか愛だかの魔性に全面降伏しているっていうことなんですよね。
個人的にはその部分は好きになれないです。本当にそうか? って思う。それを超えて、でも逃れられず、というような風が良かったけど、それをするならもっと分量が必要になるはず。