星を追う子供感想

星を追う子供」を見たら感想を書きたくなったので思わず久しぶりにログイン。

しかし、ひどい映画。映画として最悪の部類に入る所を、いままで培ってきた映像技術やら音楽技術やらがこの作品の評価をその一歩手前に引きとめてくれたように見えました。

新海誠についても、作品自体を見たことがあるという程度ですが。そういう点では以前とは違っていてがっくり、しかし、監督本人にとっても冒険だった作品ではあったのだろうとは思います。

だからって酷い展開が許されるわけではないと思うのですけどね。

さて、あらすじです。

センチメンタルな少女の前に突如怪獣が現れ、そこにさっそうと現れた謎の男の子は少女を助ける。助けを言って連れ出された少女に男の子は不思議な言葉を呟き、おでこにキス。
少女は再開を約束するが、次の日男の子は死んでしまったのだ!
心に傷を抱えた少女が男の子とのつながりを手繰ると怪しい古代文明を探る先生に出会う。どうやら死者を生き返らせることを研究しているようだ。
そして死んだ男の子に似た少年に出会うも、どうやら別人みたい。そこでヘリコプターが現れたり、なんだかんだで異世界の旅が始まったのです。



・シーン至上主義映画の顛末
冒頭すぐの少女が自然あふれる風景の中を駆けていく。確かにきれいですね。たぶん監督の中にはきれいなイメージ図だけがあったのではないだろうかと思います。


確かに途中のシーンでもきれいな背景や構図が現れたりはしました。けれどシーンのために映画を作られても困る。
もしこの映画を気に入る人がいるんだったら、設定資料集とか、イラスト集とかを見た方が映画本編よりも楽しめるんじゃないかな、なんていう風にも思いました。


シーンありきというのはストーリー全体を占めていましたね。
監督自身の長所を認識した上で構成されていることがわかります。つまり、きれいな場面をより多く出したい、と。
なるほど異世界というのはぴったりだ、と思わないでもないです。そういえば小物とかのデザインとかギミックも頑張ったのではないでしょうか。どこかで見たことあるというイメージが抜けませんけども。



・テーマを語れるレベルにあるのか?
しかし「異世界に行き、失ったものを取り戻す」というような物語がやりたいんだったら、まずその失ったものを描けと。
おそらくこのテーマがやりたいのだろう、というのはそれは見ればわかる。けど描かれなければ、描かれなくてもそれが奥に見えなければ、読者置いてきぼりという結果になるのは明らかでしょう。よくあるファンタジーの失敗例のようで。


どうやらこの少女の演出を見る限り、出会ってすぐの少年にかなり強い感情を抱いたみたいです。吊り橋効果かっていう。そのせいで途中から強いショックを受けた少女を見てもなんの共感も受けることができません。
五秒で書いた絵を名作って言われても信じられないみたいなもので。
話の途中で合流して一緒に旅をする男も先生として現れるんですが、次のシーンでは「組織」の実行部隊のリーダーで、また次のシーンでは頼れる同行者になってしまいます。
この映画で泣ける人はよほど脳内補完のスキルが高いんでしょう。それはそれで才能な位。



・空転する新海節
そしてところどころ出てくる作者の趣味のような部分。
妙な部分に凝ったセリフ使ってみたり、戦争のところでヒトラーとか出したり。そもそも異世界のスケールの大きさ自体が新海節の一つであると思います。
しかし、それは物語に必要だったのか。
セリフにしてもキャラクターの本心から言っていると感じられなかったのです。それはまぁそういうところで無理をさせたからなのじゃないか。それは面白さにつながったのか? 「新海誠」が好きな人には喜ばしい要素なのだろうか。個人的にはあまり感じられませんでしたが。



・それっぽさの王国
 やりたいテーマも、人を引き付ける映像技術も、素晴らしい音楽も、大いに結構。ただそれをまとめるというのは大変なのだろうな、と思いました。
前半部分は本当につらかったですけど、後半はまだ安定してきてよかった。”まだ”よかった。


最後誉めて終わらせようかと思ったけど、思いつかなかった。
作品に終始するそれっぽさは、おそらく考えていない部分なのではないかと思います。
「心に傷を抱えた少女」や「謎の少年」を超えるキャラクターが見たいし、そうじゃなければ「大切なもの」に共感なんて無理な話だと思います。

それっぽい「田舎」「少女」「夜景」「出会い」「喪失」「危機」「異世界」「敵」「差別」
それっぽさも過ぎれば滑稽な感じ。


もしかすると、あふれるそれっぽさは「こうしておけば受けるだろう」という思った部分なのでしょうか。
もし監督が「きれいな映像を使った物語にしたい」としたならそこそこ成功しているんじゃないでしょうか。ただ個人的には別に見たくないっていうだけで。


長文すいませんです。