笙野頼子メドレー

以下、全て笙野頼子さんの作品なわけだが、これ以外に七冊待機している。それなりに集めたものだけど、水晶内制度は読みたい

タイムスリップコンビナート

タイムスリップ・コンビナート (文春文庫)

タイムスリップ・コンビナート (文春文庫)

マグロと恋愛をする夢を見ていた頃電話で海芝浦という駅に行くように指示される、表題作タイムスリップコンビナート
迷い猫が居なくなってしまった事から、無気力になり部屋の中を蚤が跋扈しはじめる、シビレル夢ノ水

笙野作品はそれぞれに好きな部分があったりするのだけど、シビレル夢ノ水は最後の世界には思わず震えた。隠喩と連想で高みに押し上げてくれる感覚が良いのかもしれないと思う。


増殖商店街

増殖商店街

増殖商店街

 作品集で、収録作品は五つ、1995年発行だが、一つ1988年初出作品「柘榴の底」も載っている。柘榴の底は自分でも不思議なのだけど、これでもわかる部分がある自分に驚いた。まぁ好みだからそういう風におもうのかもしれないけど。
 他に印象が強いのは、表題作増殖商店街とこんな仕事はこれで終わりにする、の二つ。
 笙野作品はフィクションだということを忘れさせる。ノンフィクションではないけれど、他の小説に比べると圧倒的に近い。
だから混同はいけないとはおもうのだけれど、この作品集はそれがとても強く感じられて切り分けるとしたらとても大変だ。
 増殖商店街は野方の町で暮らす作家の物語であり、まぁ作者は住んでいたのだろう。”野方”感あるいは”ノガタ”感というものを感じられたようにも思える。
 こんな仕事はこれで終わりにする、は、作者にしかみえなかったのでどうしようか迷ったのだけれど、結局関係無いのだ。ぐぅ、という気分になった。


レストレスドリーム

レストレス・ドリーム

レストレス・ドリーム

 かなり濃密な作品で、かなりの時間がかかっているとの事だ。前にブログで挙げたサイボーグフェミニズムはこの辺りとも関連。
 ゲームに隠喩された現実、というか現実をイメージかしたからゲームになったのか。それだけ見れば奇妙な世界は、現実世界をある方向から見たものだと理解すれば読みにくさも解消されてくる。
 ゲームでの過激な戦いは、現実の平穏に隠れているようで、フェミニズム関連はいままで避けていたのだけれど良かったと思えた。読んだ中では一番中身が濃く、面白かった。


極楽

極楽 (笙野頼子・初期作品集)

極楽 (笙野頼子・初期作品集)

初期作品集、三作品収録。
文体が初期と言う事を感じさせる堅めのもので、しかし後に出てくる寓意のようなものはここでも出てきているように思う。
堅い文章に慣れているなら、あまり癖がないのでそういう意味では読みやすいのではないかという印象。
講談社文芸文庫の方でも出ている様子。


金毘羅

金毘羅

金毘羅

 文体などが変わってきている後期、と言っていいのかはわからないがそのあたりは自分が受け入れられるか不安だったが割とすんなり読めた。
 もともと天皇制の辺りについてもレストレスドリームの辺りで触れているという事を知っていたからかもしれないが、割とすんなり進んでいけた。
 なかなか触れがたい宗教関連の再構成は確かに興味深いところ。けれどこれだけ読んでもどうやってこうした話の構成を考えているのか理解しがたい。最後には何かが震えるような、どうしてなのかが理解しがたい。これは良い意味で。


というわけで笙野頼子作品はひとまず中断。もちろん触れるときは触れるはずだけど。