日常を乗り越える

山本文緒 恋愛中毒

恋愛中毒

恋愛中毒

文体は平易。
やはり魅力はストーリーか。構成の上手さはさすが。
山本文緒の魅力・特徴は、読んだ数が少ないので違うものもあるかもしれないが、現実ではためらってしまう線を乗り越えてしまう所にあると感じた。
現実ではためらうところを乗り越えて描かれる世界で感じられるスリル。それがこの本の魅力だと思う。


これは構成ありきのストーリーだったように思える。
現実で始まるプロローグから、過去へ。最初はあくまで普通の人である主人公を描き、話に入りやすくなるだろう。そこからの新しい事実や過去の出し方は、テンポ良く出すことで、主人公の行動を押し流し、先に読み進ませる。


プロローグとエピローグの現実は、最初はここからどんな事を経てそこにいたったのかという期待、途中においてはどうしようもない流れの中において読者が知れる救い、最後には若手の社員と主人公との対比、というそれぞれの効果は大きい。


もし文句を付けるなら、キャラクターか。主人公の人物像が中途半端なところ、そして他の女性登場人物が知りすぎているように感じること。そしてこれが一番なのだけれど、あの作家のキャラクターに乗りかかりすぎじゃ? 元タレントで奔放だとかそういうのは別にいいし、書き方魅力的なんだけど。後半、あれはどうなんだろう。落ち着いちゃったよね。